2008/07
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デバ、カリッパナシ

たまにはしっとりしたのを。



アイスが食べたい 013

デバ、カリッパナシ

IMG_2207.jpg


デバ、
かりていたデバ
錆び付いたのを
ちゃんと磨いでくれた自転車屋のおじさんに
きのう、私はさようならを言った。
癌化した膵臓にむかって私は、
ありったけの憎悪をめり込ませた。

おとつい、お寺の境内で遊んだ。
みっちゃんがサバの缶詰を拾って来て、
よしおが猫にやって、くしゃみをした。

歌って踊れるスナックのママが、
お寺の入り口で水玉の傘をさして立っていた。
ママの赤くなった目は まるでユウヤケ色
遠くから、お寺の住職が読経をする声が聴こえた気がした。

読経は、あたりの
しじまを揺らした。

だから今夜
魚屋からドジョウをわけてもらって
そいつを天ぷらにするはず
ぱあああんと パン粉につけて 
よったったところを、
菜箸でつかんで じじゅうううと 一発。
ぼくは 塩派。
きみは ツユ派。
かのこ姉ちゃんは オロシ派。
あの人は たぶん ぜんぶ派。

そのあと、みんなで銭湯にゆこう。
おばあちゃんは、
今日もスローモーションで、動いてるよ、
今日は台東区サービスデーで100円だから。
なのでタオルを僕にかしてほしい。
ぜったい 牛乳はおごるから。
そう、せったい 牛乳はおごるからね。

麻美たちはきのう浴衣を新調して
人生でもっとも高いものを買ったと
彼女は言った。
そうなのだ、うん、そうなのだ
あれは女としての役割を果たそうとしてる。
そうだね、ほんとにそうだね
ぼくらも彼らのように なれたらと
たまに思う。

松江は電話で生保の営業を始めたと言う。
とっても
大変なのだろう
ぼくにまで電話するのだから
彼女の娘のことは、
あえて聞かなかった僕はただしいのか
それは分からない。

先月自宅出産したばかりの鶴ちゃんは、
黄色い帽子を被ってる。
彼女が20代なのは信じられないと、
はじめて会ったおじさんたちが嗤った

だから
さようならをいおう。
実にハカナイ昨日にむかって。
あいつが素うどんを茹でおえたら
ほそぼそと ばらばらに
さようならを いおう。
あの人たちとは
もう会えないかもしれないから。

そうだよ、ほんとうにそうだ
僕はさようならを言うのに
もう2ヶ月以上もたっちゃったよ

くりかえし くりかえし
火事になった画廊から
まっくろい煙が空にのびてる。

くりかえし くりかえし
消防車のサイレンは
しじまを シェイクさせている。

だからお昼。
僕ははじめてきた誰かの屋上にあるおうちで
雲が空にいっこもない世界を
愛してもいいかなと 茶色く おもった。


どこかで
涙が一滴
羽毛布団に
シミを作ったのは
昨日。
女の喘ぎ声が
空気を透明に、ぬらした。
そう、
空気を透明にぬらした。

ぽとりと、

みんなが仕事に戻っていく、
そんな昨日。
そう、そんな昨日。





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